会社「一体感を高めるためにイベントをやります!」
社員「仕事の人手不足は?」
会社「イベントをやります!」
追撃では?
社内イベントや福利厚生が役立つことはあります。
でも、置けば勝手に会社が強くなるわけではありません。
福利厚生は設置型バフではない。
運動会をやっても、利益が23%増えるわけではない
GallupのQ12メタ分析では、エンゲージメントが高い組織と低い組織を比べると、利益性や生産性、欠勤などに差が報告されています。
ただし、これは「運動会を1回やれば利益が23%増える」という意味ではありません。
良い上司。 適切な人員。 納得できる評価。 仕事量。 裁量。
いろいろな条件が一緒に動いています。
玉入れで決算は救えません。
飲み会とチームづくりは別もの
チームビルディングの研究で扱われるのは、目標を合わせる、役割を決める、問題を一緒に解く、振り返る、といった活動です。
飲み会を開けば自動でチームビルディングになるわけではありません。
イベントが役立つなら、
「他部署に話せる人が増えた」
「相談先ができた」
のように、イベントに近い変化を見た方が分かりやすいです。
仕事がしんどいなら、先に仕事を直す
離職の理由が、人手不足、後出し指示、不公平な評価、長時間労働、役割不明なら、イベントを足しても元の問題は残ります。
穴が空いた船で、
「船内交流会を開催します!」
と言われても、先に穴をふさいでくれとなります。
イベントは主治療ではなく補助です。
福利厚生100種類でも、自分が使うのが2種類ならほぼ2種類
福利厚生は、数が多ければ価値も大きいとは限りません。
会社が1人あたり5万円使っていても、自分が使わなければ価値はかなり小さくなります。
申請が面倒。 場所が遠い。 期限が短い。 そもそも興味がない。
こうなると、
福利厚生100連ガチャ。100個あっても、自分向けのSSRが入っているとは限りません。
フリーアルコールは、酒を飲まない人にはほぼ冷蔵庫
会社「福利厚生を充実させました!」
酒を飲まない人「冷蔵庫が充実してるね」
会社の支出額と、本人が感じる価値は同じではありません。
クーポン、提携ジム、イベントも同じです。
使える人には価値がある。
使わない人にはほぼない。
「5,000円分」と「5,000円」は同じではない
会社「5,000円分のクーポンがあります!」
社員「5,000円は?」
会社「それはちょっと……」
現金は、食費、家賃、貯金、旅行、学習など、自分で使い道を決められます。
用途限定の制度は、その分だけ自由が減ります。
だからカフェテリアプランや選択制の制度は、好みのずれを小さくしやすいです。
時間を選べることも福利厚生
人によっては、クーポンよりフレックスや在宅勤務、有給の取りやすさの方が価値があります。
2024年にNatureで発表されたハイブリッド勤務の実験では、研究対象の条件下で、週2日の在宅勤務が評価や昇進を悪化させず、離職を減らしたと報告されています。
ただし、どの職場でも同じ結果になる保証ではありません。
大事なのは「福利厚生」という名前より、生活の自由が実際に増えるかです。
休日を使う福利厚生は、本当に福利なのか
「自由参加です」
でも上司も全員来る。
断ると理由を聞かれる。
休日開催。
自由参加(自由とは言っていない)。
会社側は、参加率だけでなく、断りやすさや時間負担も見た方がいいです。
会社は「用意した数」より「使われたか」を見る
休憩室に水を置いて、
「水のROIを提出してください」
まで始めたら、水もびっくりします。
すべてを利益へ直結させる必要はありません。
ただし、使われない制度を永久保存する必要もありません。
利用率を見る。 負担感を聞く。 小さく試す。 使われなければやめる。
福利厚生にもリストラは必要です。
本当に大事なのは、自分で選べること
福利厚生は、会社が選んだ楽しみを配る大会ではありません。
社員が欲しいのは、現金かもしれない。
時間かもしれない。
働く場所かもしれない。
生活の保障かもしれない。
まず仕事そのものの問題を直す。
そのうえで、使う人が本当に得をする制度を選ぶ。
そして、できるだけ本人が選べるようにする。
この順番なら、会社の善意と社員の実感がずれにくくなります。
参考資料
- Gallup, Q12 Meta-Analysis, 11th Edition, 2024
- Klein et al., Does Team Building Work?, 2009
- Mazzetti et al., work engagement and job outcomes meta-analysis, 2023
- Ouimet & Tate, Non-Wage Compensation and Employee Turnover, NBER, 2023
- Bloom et al., Hybrid working from home improves retention without damaging performance, Nature, 2024
- Cullen et al., remote-work valuation research, NBER, 2025
- SHRM, Employee Benefits Survey, 2025
